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YoUSO-008
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はじめての方、
この作品を読む前にコチラをごらんください。

いい加減、次の話に進むんだぞよ。

使徒、襲来 後



リツコは一角の説明を終えると保健室を出て行った。
一人ベッドに残されたシンジは幼い頃、研究所へ連れられていったことを思い出す。
「…父さんも、母さんも、どうして何も言ってくれなかったんだろう」
昔から、仕事のことは両親同士で話をしていることはあっても自分に振られることはなかったと思う。
自分が両親の仕事から逃げていたから、と言うのもあったかもしれないが。
だから兵器を開発しているだとかその兵器のパイロット候補に自分が上げられているだとか、
シンジにとっては寝耳に水としか言いようが無い。
「嫌だな…家に帰りたくない…」
自宅に帰れば、いや、自宅に居れば、近いうちに必ずこの話を、事実を両親の口から聞くことになるだろう。
そんなのは嫌だった。
なぜ嫌なのかはわからない。
わからないけど、たぶん。
シンジは両親にとっての“自分”という存在の意義を確認したくなかった。

「なんやシンジー、えらいゆっくりしてきたやんか」
二時限目が始まる前に教室に戻ると出迎えたトウジにバンバン背中を殴られる。
「お帰りシンジー、どこかネジ外れちゃないだろうなー!」
「ちょっと、鈴原!碇君は一応ケガ人なんだから!」
続いてケンスケがトウジの後から現れ、委員長ヒカリがトウジの止めに入った。
「いいよいいよ洞木さん、一応トウジも手加減…してくれてたのかわからないけどもう平気…だし」
平気、と言う言葉で単純に兵器を連想してしまう自分に少しの嫌悪。
「かなぁあり手加減しよったんやで、シンジは日ごろの鍛錬が足りんのじゃ!なんならワイが特訓つけたるで!」
「ええ、さすがに遠慮しとくよ…」
「トウジに付き合ったらシンジなんか一日で潰れちまうもんな!」
ケンスケがからかうのをよそに、意気込むトウジの申し出をシンジは本当は受けたかった。
なんとなく、誰でもいいからさっきの保健室での出来事を忘れさせてくれる存在とぶつかりたかった。
でもそれはトウジやのトウジの家族に迷惑をかけそうだから、喉からでかけた言葉を必死で押し込める。
「…そう言えば、アスカは?」
教室を見渡しても、シンジが何かしら具合を悪くすると真っ先に心配して駆け寄ってくる少女の姿が見当たらない。
「そうそう、アスカ、赤木先生に呼ばれていったのよ。お母さんのことらしいけど…」
「赤木、先生に…?」
まさか、きっと偶然だろう。
アスカの母親の仕事についてはアスカがあまり話したがらないから母子家庭だと言うことしか知らないけど、
仕事中か何かに具合が悪くなったのかケガでもしたのだろうか。
「大丈夫かな、アスカ」
「ね、大変なことになってないといいよね…」
「ふん、どーせアイツのことじゃたいしたことないに決まっとる!このワイが言うんやからお前らそんなシケた顔すんなや!」
ヒカリと二人で不安に陥っているとトウジがまたしてもバシバシと背中を叩いた。
口は悪いがトウジなりの級友達への励ましだと言うことはわかっているから今度はヒカリも反論しなかった。
「そうだね、早く帰って来るといいね」
じゃあ席に戻るよ、と二人から視線を逸らすシンジの目に、なにやら見慣れない光景が目に入った。
「渚君てどこの学校に居たの?」
「カヲル君はどこに住んでるの!?」
「綾波さん!今日はご自宅までご一緒させてください!」
「あなたはなんて素敵なんた!綾波さん」
教室で一番後ろの、窓際のシンジの席の隣とそのまた隣の席に群がる黒山の人だかり。
「何、アレ…」
一人は心当たりがあるとして。
「今日、転校生、二人来たんだよ」
シンジの前の席のケンスケが説明する。
「二人も!?えっとほら、渚君だっけ…彼だけじゃないの?」
「なんだ渚は知ってたのか!いやさあそれがもう一人は女子なんだけどすっげー可愛いの!頭もとびきりいいらしいし!くぅ~!天は二物を与えないなんて嘘だ!」
と言いつつカメラを構えるケンスケのもはや獲物を捕らえるハンターの目をしていた。
ケンスケは学校に美男美女が居ると本人に無断で写真を売りさばいて小遣いを稼ぐやつだった。
あきれた、と思い席に着くと、机に影。
「碇シンジ君、同じクラスだったんだね」
声の方を見上げると、渚カヲルが見下ろしている。
「え、あ…うん。渚君もA組だったんだ…」
黒山のたかりのなかの誰かじゃなく、特別に自分を選んで話しかけてくる渚カヲルより、更にその後で動向を見守る黒山の、とりわけ女子達が息を呑む声が異様に気になる。
「そうそう、さっきは言い忘れたけど僕のことはカヲルでいいよ。よろしくね、シンジ君」
手を差し伸べられる。
女子達の視線が痛い。
「えっと、よろしく…カヲル君」
手を取った。
「「「キャー!!!!」」」
黄色い感性ととれば嬉しくなくもないけど、その対象は自分じゃなくて渚カヲルなんだよな、と思うと少し複雑だ。
「あ、あの…ごめんよっとトイレ行ってくる!」
授業が始まるまでトイレに逃げようと教室を出る。

ゴイ~ン

まさにそんな感じの擬音がシンジの脳内を占拠する。
「いっ…たあ~いい!!」
「いてて…」
衝撃の加えれれた方向を見ると、見慣れない女子(たぶん件の転校生だろう)が目に涙を浮かべながら側頭部をさすっている。
どうやら同時に教室のドアから出ようとして肩と肩がぶつかり、つんのめって頭までぶつけたらしい。
とっさにゴメンと謝ろうとするとキッと睨まれる。
「何よあなた!ちゃんと横から人が来てないかどうか見なさいよね!」
無理言うな。
「う、ごめん…本当にごめん、気をつけるよ…それより、大丈夫?怪我は無い?」
このタイプの女子はアスカに通じるところがある。
逆らうと無益な喧嘩に発展しかねないので、先手を打って気遣いを見せることが大事だ。
「え?別に、ちょっと痛かっただけだけど…それよりあなたこそ…ちょっ、大丈夫なの顔真っ青!?」
横で騒ぐ見慣れない女子の声をぼんやり聞きながら、シンジはまた気を失った。

まさか二時限目も保健室で過ごすことになるなんて。
三時限目こそは授業を受け、休み時間を得たシンジだったが、さっきから教室中の視線が痛い。
右にカヲル、左に先ほどぶつかった女子、転校生の綾波レイ。
「さっきはごめんねぇ~!まさか頭ぶつけるの二回目と思わなくて!」
正確には頭でなくて顎だし、回数は関係ないし、知っててもどうしようもなかったと思うけど。
と言う言葉は飲み込む。
今何か口を開くには、二人の周りの黒山と、そして何より教室に戻ってきていたアスカの視線が痛い。
「ねえねえ、碇君てどこに住んでるの!?方向同じだったら一緒に帰りましょう!」
どうしてかわからないけど、レイには一目ぼれをされてしまったようだった。
レイはしきりにボディタッチを仕掛けてくる。
これはまずい。
アスカの視線が本気でつきささる。
「シンジ君は僕と一緒に帰るんだよ」
レイの対応に困っているシンジにカヲルが、笑顔を崩さず横槍を入れてきた。
カヲルにも謎の好意を向けられてくる。
「なんでよ、あんた転校生にかこつけて碇君を狙ってるんでしょ!このホモ!変態光線で満ち溢れてるわ!」
ホモ、そうかそういう視線もあるのかな、シンジはいたたまれない気持ちでいっぱいになる。
「とにかく、今日は私が碇君と帰るのよ」
「そうはいかないよ、僕はシンジ君のお隣のお隣のお隣さんだからね」
シンジの家=高層マンション=隣の隣の隣=帰る方向が全く一緒。
「きぃ~!気の効かない男ね!じゃあ同じ時間に帰らなければいいじゃない!」
ヒートアップレイとクールなカヲルの板ばさみにはもう、絶えられない。
アスカの視線にも男子女子の視線にも、クラス中の視線に、耐えられない。
「黙って聞いてれば…シンジはね!私と帰るのよ!」
とうとうアスカも切れた。
「なによアンタ突然入ってきて!あなた碇君の何なのよ!」
「突然入ってきたのはアンタのほうでしょ!?私は、私はシンジの…」
それまでものすごい勢いでレイに食って掛かっていたのに、後半急に真っ赤になって口ごもるアスカ。
「ちなみに、僕はシンジ君のお母さんからも「仲良くしてね」ってお墨付きをもらっているシンジ君の友達だよ」
カヲルはカヲルで朝のユイとのやり取りをそれとなく強調して拡大解釈している。
「「あんた(あなた)は黙ってて!!」」
レイとアスカ、二人のダブルストレートをカヲルは涼しい顔でひょいとよける。
「シンジ、がんばれ…一週間もすれば収まる、はず…」
合間を縫ってケンスケがこっそり耳打ちしてきてくれたが焼け石に水の励ましにしかならない。
「もう、ほんと簡便してよ…」
こんなやりとりは休み時間が来るごとに、本日の授業終わるまでずっと続いた。

「シンジ君」
カヲルが追いかけてくる。
「どこに行くんだい?」
生憎というか幸いにしてというか、レイの家は二人とは全く逆方向だった。
「家に帰らないの?」
とりあえず疲れていて、一人になりたかった。
黙っていると、カヲルも何も言わずに着いてくるようになった。
たどり着いたのは街が見渡せる、高台の公園だ。
フェンスによっかさるとカヲルも少し離れたところで立ち止まった。
二人とも黙っていたが、カヲルが鼻歌を歌い始める。
「…第九」
シンジが顔を向けると、カヲルもこっちを見ていた。
「歌はいいね。歌は言葉と言う壁を通り越して思いを伝えてくれる」
相変わらずにこりと笑っていて、西日が彼の表情をより一層シンジの目に深く刻み込む。
「ヒトが、リリンが生み出した文化の極みだ」
「リリン?」
シンジが聴きなれない言葉を呟いても、カヲルは何も補足しなかった。
「シンジ君」
名前を呼ばれると、シンジの身体は金縛りにあったように動けなくなった。
「僕を怖がらないでシンジ君。使徒は、必ず来る。だけど君は決して死なない。一人にならない」
何を言われているのか、なぜカヲルがそんなことを言うのか。
わからない。
「僕が、君を決して一人にしない」
言葉は緩やかな風にさえ飲み込まれてしまうほど微かだったのに。
直接、心の中に届いたようにシンジは感じた。

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悟史君と圭一君とカヲル君とシンジ君にメロメロだ。
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